『うたかたの思い』


桜色の髪が触れてしまいたいくらいに美しい。こうして見てみれば、彼女の言うように可愛いと思ってしまう。ただ一つうるさい事を除いてだが…

「もう、あんたって相変わらず暗いわね。ねぇ、エルクってば聞いてるの!」

いつもと変わらぬ声が頭の中で響く。黙ってたら可愛いのに…
そんなことはないと言い返してやりたいと思うが、
いくらいっても静かにしてくれるはずがない。
そして、自分の考えをため息として外に押し出す。

「またぁ、ため息ばっかりついてたら、幸せがどっかに飛んでっちゃうわよ。」

「僕の幸せを考えてくれるんだったら、少しは静かにしてくれないかな?セーラ。」

エルクは、そう言い終えると再びため息をつく。
セーラは、少し間をあけてから、

「なによ!こんな可愛い子があんたみたいな奴に話しかけてるんだから、少しは感謝しなさいよね!ろくに女の子に声をかけてもらったことなんかないくせに!」

エルクは、「誰が可愛いって?」という言葉をあえて言わず、ため息として…

「もうっ、ため息ばっかりつかないでよ。私の幸せまでどっかに飛んでいったらどうするのよ!」
エルクは黙ってこの場を立ち去った。これ以上いるとエルファイアーで攻撃しそうなので…


そして、夜。
ここは、エルクのために軍から用意された部屋。

セーラは、無茶苦茶だ。言動にしても、行動にしても。

なんで、あんな奴の護衛につかないといけないんだ?
護衛っていっても前線にいるわけじゃない。
傷ついた味方が下がってきたら、ライブで回復し、再び送り出す。
この過程に僕がセーラを守るタイミングなんてないじゃないか。

エルクは、セーラに話しかけられるたびにこう考えてしまう。
抜け出せるものなら、抜け出したいよ。全く…

「そうだ」

エルクは、ある事を思いつく。

「護衛任務中に抜け出してやろう。そしたら、近くの森にでも隠れてのんびりと本を読むことが出来る。」

まぁ、なんかあった時のために出来るだけ離れないでやるか。
エルクは、納得した。


そのころ、セーラは…


「エルクったら、本当に最低ね!どうやったらあんなねじ曲がった性格になるのかしら!普通、会話の途中でいなくなるなんてありえないわよ!」

とセーラはエルクが居ないのにも関わらずひたすら罵る。

「せっかく、私が話しかけてあげてるんだから、少しくらい感謝したらどうなの!あぁ、もう最低!」

セーラはろうそくの灯りを消し、ベッドにもぐりこむ。

「この世にあんたより最低な奴なんていないわ。虫以下よ!」

捨て台詞を言い切って満足したセーラは、目を閉じる。
羽毛のベッドはやさしくセーラを包み込み、そっと夢の世界にいざなう。
セーラはあっという間に眠りに落ちた…


そして、翌日。空は前夜同様に雲一つない。戦いなんかなかったら、外でのんびりしたいぐらいに心地よい。

「もう、エルクったら何処にいったのかしら?か弱い私がケガでもしたら、どうするつもりなのよ!きずぐすりは、あんたが持ってるのよ!」

マシューに怪我人がいるからお前の力がいると呼ばれ、行って帰ってきたら、エルクがいない。そして、今に至る。

「何処に行ったのよー!」

セーラは声をあげながら辺りを見回す。
まさか、昨日のことで傷ついた?そんなことないわよね。
私が話しかけてあげてるんだから、傷つくどころが傷なんか癒えちゃうわよね。
セーラは、自分を納得させて、エルクを再び探し回る。

その頃、エルクは…


ページをめくり、のんびりとしながら木に腰掛けながら本を読む。
最近はこんな時間なんてなかった。
いつも、セーラに話しかけられて、本を読む時間なんてなかった。
だが、今は彼女はいない。
この時間を有意義に過ごそうと思い、本に目を通す。
あいかわらず、セーラの声は聞こえるがエルクは本に目を通す。

風が心地いい。だが、心地よさゆえに眠たくなってくる…ダメだ、僕には一応護衛の任務が…しかし、エルクも睡魔には勝てなかった…


「ねぇ…エルク…何処に行ったのよ…」

さすがに長時間、動き回り続けるのはつらい。
はぁ、はぁと息を切らし、ちょうどいい岩に腰掛ける。

「何処をほっつき歩いてるのかしら?」

ライブの杖に力をこめる。セーラにかかれば回復用の杖でさえも武器にかわる。

「だいいち、あんたは私の護衛なんだから、勝手にいなくなるなんておかしいじゃないの!」


セーラは空を見上げる…
エルクは、任務を投げ出したりはしない、それは、自分が一番わかっているつもりだ。
何か、理由がある。
もしかして、本当にあの事を気にしているのかしら?
「そ、そんなことがあるわけ…ないわよね…」

わかってる。でも、信じたくない。
セーラは他には何かないかと考える。
そうよ。きっと入れ違いになったのよ。きっとそうよ。
セーラは立ち上がりいつもの場所へと駆け足で向かった。
エルクがいつもと同じように立っている姿を思い浮べながら…


木々は、焼けるような夕焼けの色に染まりはじめていた…

「僕は、寝てしまったのか!」

エルクが、がばっと起き上がる。その拍子に読んでいた本が飛ぶ。エルクは、急いで本を拾い、セーラがいるはずの場所に目をやる。
しかし、セーラはいなかった…

エルクの顔が青ざめる。
もし、セーラの身になにかあったら僕の責任だ。
エルクは、セーラを探す。

セーラの前には戦士と山賊が立っていた。手には、大きな斧が握られている。

「へぇ、こんなところにシスターが一人で居るとはねぇ。」

「ちょっと、そこ、どきなさいよ!」

「嫌だね。俺たちの仲間はこの軍にたくさん殺されたんだ。」

「すまないが、腹いせにしんでもらうよ。」

山賊が斧を大きく振りかぶった。
その時!!
山賊が真横に吹っ飛んだ。
「誰だ!?」

戦士が見た方向に魔道士が立っている。

「え、エルク!!」

セーラは声を上げた。

「き、貴様よくも俺の相棒を!」

「女性に二人がかりってのは、どうかと思うけどね…」

エルクは、低い声で感情を押さえるように言った。

「うぉぉぉ」

戦士がエルクに突進する!
戦士は振りかぶりエルク目がけて斧を振りかざす!
しかし、エルクはそれを巧みにかわし、戦士の首を掴み、こう言った…自分でも驚くような言葉を。

「彼女を傷つけるな!失せろ!」

ものすごく、すごみのある声だった。

戦士は、震え上がり山賊を起こして逃げ出した。
まさか、エルクからこんな声が出るなんて、思ってもみなかったのだろう。

逃げていく戦士等の姿が見えなくなってから、セーラに声をかけた。

「セーラ、大丈夫かい?」

さっきとは、打って変わってすべてを包み込むような優しい声。
エルクは、セーラの手をひいて立たせた。
今回ばかりは『触らないでよ』という言葉は、出なかった。そのかわりに耳を澄まさないと聞こえないような声でこう言った…

「――すごく怖かったのに…。なんで、そばにいてくれなかったのよ…」

そう、いってセーラはエルクに抱きついた。
エルクの腰に手をまわし『私を一人にしないで…』とでもいうように…。
突然の事に混乱しそうになったが、なんとか平常を保ち、セーラの頭をそっとなでてやる。
すると、セーラは安心したのか、今になって泣きはじめた。エルクは、セーラが泣き止むまで待ち続けた。


セーラがようやく泣き止んだのは夜中。もう月が真上に来そうである。

「セーラ、落ち着いたかい?」

ようやく、エルクから離れたセーラは、ゆっくりと頷く。

「じゃあ、そろそろ帰ろうか。みんな心配してるだろしね。」

しかし、セーラは首を横にふった。

「…なんで…」

「えっ…」

「…なんでそばにいてくれなかったのよ!って聞いてるの…」

セーラの涙に潤んだ瞳がエルクを見上げる。
こんな目でみられたら嘘なんてつけるわけないじゃないか…

エルクは、セーラにすべてを喋った…


「ひどい!」

セーラは、ほおをふくらませた。
いつものセーラに戻ってきたことを感じてエルクは安心する。

「謝るよセーラ…今回は僕が悪い。君の言うように最低だ。」

「そうね、あんたは最低よ。任務ほったらかして、本読んでたんだからね!」

セーラは、エルクをにらむ。
『そこまで言わなくても…』と言い返せないのは、セーラの目がまだ赤かったから。

「償いをしてもらわないとね!この可愛い私を泣かせた罪は重いわよ!」

セーラなら‘城’を要求しかねない。
しかし、どんなことでもエルクは応えるつもりだった…。
エルクは、セーラを見る。

「…し、質問に、答えてもらうわ。」

えっ!?質問。あのセーラがそんなことで済ませてしまうのか?
エルクは驚いて目を丸くする。

「え、エルクは、その‘置いてある本’と‘私’のどっちが大切なの?」

こういう質問か…
‘本’と言えばセーラにまた泣かれかねない。
‘セーラ’と言えば、後々面倒なことになるかもしれない。

エルクは色々考えたが、心は決まっていた。

「認めたくないけど………」

その言葉を聞いたセーラは、満面の笑みをうかべた…

純粋に美しいと感じたセーラの一瞬をエルクは一生、忘れなかった……

そして、この笑顔を見て悟る。

セーラを守りたいと思う、自分がいることに………


〜後書きという名の言い訳〜

初カップリング!!
エル×セラ(エルクとセーラ)

まぁ、何を書いても初になるんですけど…

いいねぇーこの二人。
普段、ツンツンしてるセーラが弱みを見せる一瞬…
このギャップ、エルクはたまらないでしょうね!

さて、次は何を書こうかな?

リリーナのギャグ話が出来てるんで、次はそれをアップします。

Link of RADICAL  へ戻る